今度のロボットはおじいちゃん!?~映画「ロボジー」~

今度のロボットはおじいちゃん!?
~映画「ロボジー」~

今まで数多くのロボット映画が製作されてきましたが、中に人間が入ったロボットはいなかったのではないかと思います。しかもただの人間ではなくおじいちゃんなのです!そんな前代未聞のロボット映画「ロボジー」についてと、その出演者であるミッキー・カーチス、吉高由里子についてまとめました。

キャストと感想

映画「ロボジー」の魅力の一つに、豪華な俳優陣という点があります。主役は歌手としても俳優としても第一線で活躍していた五十嵐信次郎(ミッキー・カーチス)です。脇を固めるのは「惚れてまうやろー!」のギャグで有名なチャン・カワイ、最強の小市民と言われる濱田岳、NHK連続テレビ小説「花子とアン」で主演を務める吉高由里子など、実力派が揃っています。矢口作品の常連である田辺誠一や竹中直人がほんのちょっとだけ出演しているのも面白いですね!

キャスト

  • 鈴木重光(ニュー潮風の中の老人)・・・五十嵐信次郎(ミッキー・カーチス)
  • 佐々木葉子(ロボットおたくの大学生)・・・吉高由里子
  • 小林弘樹(木村電器のエンジニアでニュー潮風の開発者の一人)・・・濱田岳
  • 太田浩次(木村電器のエンジニアでニュー潮風の開発者の一人)・・・川合正悟(チャン・カワイ)
  • 長井信也(木村電器のエンジニアでニュー潮風の開発者の一人)・・・川島潤哉
  • 伊丹弥生(地元テレビ局の記者)・・・田畑智子
  • 斉藤春江(重光の娘)・・・和久井映見
  • 木村宗佑(木村電器の社長)・・・小野武彦
  • 春江の夫・・・田辺誠一
  • 老人クラブの保健師・・・西田尚美
  • 白バイの警官・・・田中要次
  • きぐるみの男・・・森下能幸
  • 重光の孫・・・古川雄輝
  • 重光の孫・・・髙橋春留奈
  • トイレの酔っ払い・・・竹中直人

スタッフ

  • 監督・・・矢口史靖
  • 脚本・・・矢口史靖
  • 製作・・・亀山千広、新坂純一、寺田篤
  • 製作総指揮・・・桝井省志
  • 音楽・・・ミッキー吉野
  • 主題歌・・・五十嵐信次郎とシルバー人材センター「MR.ROBOT」
  • 撮影・・・柳島克己
  • 編集・・・宮島竜次
  • 製作会社・・・フジテレビジョン、東宝、電通、アルタミラピクチャーズ
  • 配給・・・東宝

主題歌「MR.ROBOT」について

映画「ロボジー」では主題歌に1983年に大ヒットしたスティクスの「MR.ROBOT」が使われています。誰もが一度は耳にしたことのあるあの曲を、五十嵐信次郎とシルバー人材センターという名のバンドがカバーしたものがロボジーの主題歌になっています。この曲コーラスには、「ドモ アリガト、ミスター・ロボット」などと言った日本語の歌詞が入っています。日本の楽曲に英語詩が入ることは珍しくありませんが、アメリカの曲に日本語の歌詞が入っているのはとても珍しいのではないでしょうか。日本語の歌詞は以下のようなものです。「どうもありがとうミスターロボット また会う日まで」「どうもありがとうミスターロボット 秘密を知りたい」。

歌の背景

この歌は、ロックオペラの「キルロイ・ワズ・ヒア」の中で主人公が体験する物語の一部を語っています。反ロックンロール団体とその設立者であるエヴェレット・ライテアス博士により「社会不適格ロックンローラー」という罪で未来の刑務所に収監されているロックンローラーのキルロイがこの歌を歌うのです。「ロボット」は刑務所内の諸任務をこなす看守で、キルロイはこの看守ロボットを乗っ取って内部を空にしたロボットの金属製外殻の中に隠れ、刑務所から脱獄します。さながら「ロボジー」のニュー潮風に入った鈴木重光のようですね。

感想

爺さんとロボット

もしもロボットの中身が爺さんだったら…そんなことこの映画を観るまで考えもしませんでした。主人公の鈴木重光は、頑固で偏屈なごく普通の爺さんです。家ではシャツにステテコ姿で、新聞を読んだりテレビを見たり。演じているのはミッキー・カーチスさんなのですが、あのオシャレでカッコいいロックンローラーがこの爺さんだと気付くまでには時間がかかりました。妻の仏壇にお線香を供えて、新聞読みながらそのまま眠ってしまう姿にはちょっと哀愁を感じます。暇すぎて老人クラブに足を運んでも、どうも面白くない。結局屋上でビールとなるわけですが、実際こういうおじいさんは多いのではないかと思います。丸まった背中がとても淋しい場面です。しかし、そんな淋しい爺さんが、ロボットと出会って変わっていきます。ミッキー・カーチスさんがとても演技が上手なのか、ニュー潮風を被っていないときもロボットっぽく見えるのがすごいです。確かに二足歩行のロボットって、バランスを取るためにちょっと膝を曲げて腰を落とし、猫背気味でゆっくり歩くので、お年寄りに見えなくもないんですよね。

ズッコケ3人組

ニュー潮風を開発した3人組は、チビ・デブ・ノッポという3人組のお手本のような凸凹具合です。彼らの名前も、小林・太田・長井とそのまんまなのも面白いですね。この3人組、最初は地味すぎて大丈夫かなと不安になったのですが、それぞれきちんとキャラクターを持っていてすごくいい!特にチャン・カワイさん演じる太田が好きでした。汗っかきで切れやすく、おっちょこちょい。でも根はまじめで良い奴というデブキャラの典型みたいなキャラクターでしたが、チャン・カワイさんが演じることで映画の重要なスパイスとなっていたと思います。また、小林役の濱田岳くんもはまり役でした。チビで小心者でお人よし。ロボットに人間を入れるなんていうのは、詐欺みたいなものですから、実際にそんなことが起こったら大問題になりかねないのですが、濱田岳がいることで許されるといいますか、「ま、騙されたけど別に困ってないからいいかな」と思わせてくれるのです。それもこれも濱田岳の小市民っぷりと人の好さがにじみ出た演技のお陰だと思います。そこまで計算して彼をキャスティングしたのだとしたら、矢口監督天晴れです。

変態か、可憐な少女か。

キャストでいうと、ロボットオタクの女子大生・葉子役の吉高由里子さんも非常にはまり役でした。ロボットに命を助けられて恋に落ちてしまうというぶっ飛んだ役で、下手な人が演じればドン引きされかねないところですが、それをさらりと演じてしまうのは流石実力派女優です。後半、木村電器の3人組に冷たくされ、まるで失恋したかのようにニュー潮風グッズを捨てまくるところや、人間が入っていると確信してストーカーになるシーンは迫真の演技でした。眼の下にくまを作って執念で小林の住所を探り当て、ごみ漁りまでやっちゃう葉子には笑わせてもらいました。一歩間違えたらただの変態ですが、そんなことをしていても観客に可愛いと思わせてくれる演出の妙・演技の技術は凄かったです。

老人の切なさ

ロボジーを面白くしているのはやはり鈴木重光のエピソードだと思います。偏屈で我儘という典型的な爺さんですが、この爺さんを取り巻く環境がちょっと切ないです。自分がニュー潮風の中身だと老人クラブで暴露するシーンなどはその最たるもので、保健師に「おじいちゃん、今日の日付分かる?」などと認知症扱いされてしまいます。お友達にも遂にボケたと噂され、結局とぼとぼと帰る爺さん。仕事をリタイアして、子供も独り立ちし、妻には先立たれ、老人会ではボケ老人扱い。もう毎日が暇すぎて辛い、というときに出会ったのがニュー潮風だったわけです。時間を持て余している爺さんにとって、自分を必要としてくれる人がいて、日本中でもてはやされる仕事なんて、嬉しいに決まっています。ましてや大好きな孫が自分が演じているニュー潮風に夢中だと聞けば張り切るのも必然です。イベントを抜け出して孫を追いかけ、孫の家を訪ねるニュー潮風。大喜びで写真を撮る孫たちが、「おじいちゃんの匂いがする」というシーンは、ぐっとくるものがありました。ニュー潮風を引退することを決意した重光じいさんが、一人で木村電器を去っていくところも切ないです。

まとめ

とにかくキャスティングが良い映画でした。それぞれがきちんと個性を出し合い、それをうまく引き出し合っていたと思います。小技を効かせた笑いと、絶妙に張られた伏線、そしてじんわりと心に響くシーンの数々。どれをとっても良い映画だったと思います。ロボットに人間が入っているなんて疑いもしないのは、それだけ今の技術が進歩しているということでしょう。二足歩行するロボットなんていくらでもいますからね。これからもどんどん技術は進化して、いつか本当にニュー潮風のような、何でもできるロボットが生まれるかもしれません。そんなロボットが登場したら、この映画を思い出し、人間が入っていないかと疑ってみようとおもいます。